私は8年前から
ある病院の緩和ケア病棟で
リフレクソロジストとして
ボランティアをしています。
今の仕事が
私のライフワークとなった
原点ともいえる
ボランティア活動の場です。
先日、その病院で
30代の男性患者さんと出会いました。
気管切開をされていて
会話をすることのできない方でした。
入院は出会った日の前日。
ボランティアなどによる
支援を受けた経験も
ボディートリートメントも
受けた経験がないということで
ナースがまずは声をかけてくださいました。
私が伺うと
ちょうどナースが
説明をされている最中で、
ご本人はなんだかよくわからない
ご様子。
一緒にいたのは
幼さの残る顔をされた奥様。
少しでも旦那様に
気分転換をしてもらいたいと
思われたのでしょう、
ナースと一緒に
リフレクソロジーを
体験することを
勧めてくださいました。
ご主人は手元のゲームから
目を離さず、
半信半疑ながら
うなずいておられました。
何かのセラピーを始めて受ける場合、
一般的には
ご本人の自発的な行動から
始まりますが、
緩和ケア病棟では
特にボランティアということもあり
ご本人の希望から、
ということは
ほとんどありません。
特に、若い男性の患者さんとなると
「断ることが面倒くさい」
という理由から
受けられる方も多いです。
今回の方も
お気持ちは
同じだったのかもしれません。
ただ、私があいさつをすると
半顔しか動かない顔を
ゲーム機から私に向けてくださり
笑顔でうなづかれました。
とても感じの良い印象でした。
そこで私はいつものように
簡単な自己紹介をして
「何かあればいつでも
手や足を動かして
私に知らせてくださいね」
とお伝えして、
ベッドに座られていた
状態そのままから
施術を始めました。
そして患者さんは
またゲームに
目を落としました。
10分くらいすると
ゲームをしていた手が止まり
目を閉じている様子が伺え、
奥様を見ると
嬉しそうにうなづかれました。
私もうなづいて
そのまま続けていると
両手に持っていたゲーム機から
片手が外れ、
ご本人が居眠りをしていたのに
気が付き、私と目があいました。
私が
「横になりますか?」
と伺うと、
首を横に振られて
少し恥ずかしそうに
またゲームを始められました。
そして またうとうと。
私に気を遣い
必死に起きているような
様子にも見えたので、
「眠って頂いて
いいんですよ。
足を触られるって
意外と気持ちがいいんですよね。
眠くなるのは普通のことです」
というと、
大丈夫、大丈夫
というように、手を振られました。
施術が終了したときは
すっかり
眠っていらっしたので
奥様にだけご挨拶して
そのまま退室しようとしていたところ
ご本人が気付かれて
メモ用紙に
「どこかに
飛んで行っちゃいそうだった」
と、書いて満面の笑みを浮かべて
私に見せてくださいました。
奥様も
目に涙を浮かべて
「よかったね、そんなに気持ち
良かったんだ!」
と声をかけられていました。
私にとって
こういう時にいただく言葉が
ものすごい力になります。
緩和ケア病棟に
入院される多くの患者さんは
様々な痛みや不安、悩みを乗り越え、
入院中もなお
多くのものを抱えていらっしゃいます。
私たちの仕事は
そのようなマイナスの感情を
少しでも取り除き
少しでもプラスに変えていく
力や勇気を持っていただくこと。
今、生きているという実感や
楽しみ、持てる希望を
見つける
お手伝いをすることだと
私は考えています。
そして、結果としては
患者さんから
多くの力を
私が頂いてしまいます。
その頂いた力は また
多くの方に
お渡しして
エネルギーの循環が
おこります。
こんな橋渡しができる仕事に
出会えたこと。
OLをしていた時を考えると
奇跡としか言いようがありません。
今回のような
場面に出会うたびに
感謝の念が
湧き上がってきて
これからも丁寧に仕事を
していこうと誓うのです。